リーガ屈指の"ファーストディフェンダー"になるか(吉川智貴15-16・8節エルポソ戦)
2016/08/28
「吉川はサプライズです。彼のディフェンスは強く、大胆で勇気がある」
2000年のワールドカップ優勝メンバーである元スペイン代表ゴレイロ、リカルドがそう話す。
エルポソ対マグナ・グルペア戦はムルシア州の地元テレビ局で生中継された。エルポソの地元だ。解説者のリカルドは元エルポソの選手でもあり、エルポソについて話す時は「私たちは」と表現する。実況も解説もホームチームびいきだ。そんなエルポソに肩入れする実況者と解説者のリカルドはマグナ・グルペアのパフォーマンスを称え、吉川のプレーについて何度も言及した。
エルポソはフットサル大国スペインを代表する名門であり、強豪だ。マグナ・グルペアはアウェーでそのチームを負かした。8節の大きな話題となった。マグナ・グルペアが4-2で勝利した。試合後にマグナ・グルペアの選手、テクニカルスタッフはタイトルを勝ち取ったかのようにロッカールームで記念写真を撮っていた。「あの体育館で勝てたことはないとチームメイトが言っていた」と吉川が言うように、ナバーラ州のチームにとってクラブ史に残る偉業だ。それほどアウェーのエルポソ戦に勝利するのは難しい。
4-2と勝利したゲームで、吉川は2失点に絡んだ。1失点目は吉川のオウンゴールだった。2失点目はPKをミゲリンが決めたが、そのPKを与えるファウルを犯したのは吉川だった。
「映像だと僕が完全に倒しているように見えますけど、さきに向こう(リマ)が勝手に倒れたんです。その倒れた彼が僕のユニフォームをつかんでいて、僕はバランスをとるためにつかんでいただけでした」
吉川にとっては不運だった。だが、その不運がクローズアップされることはゲーム中もほとんどなかった。それよりも彼のディフェンスが大きなインパクトを残した。
吉川はファーストラインで、相手の攻撃の芽を潰していった。出足が速く、あっという間にボールホルダーとの間合いを詰めると、考える時間を与えず、ボールを狩りに行く。プレーの強度は高く、ミゲリン、リマといった名手は苦労していた。「結構ディフェンスが粘り強くできたと感じています」と本人も手応えをつかんでいる。
「エルポソ戦のミーティングやその前のトレーニングでは、いつも以上にボールに対するプレスの位置の高さを監督から指示されていましたけど、ディフェンスのやり方を特別に変えるってことはありませんでした」
この日のマグナ・グルペアはプレスの始点をいつものように高い位置に設定し、仕掛けていた。そのファーストディフェンスで吉川は何度かボールを奪うなど、チームのラインの高さ、そして士気を維持させた。パフォーマンスは特筆すべきで、スペインでも屈指のファーストディフェンダーと呼ぶにふさわしいプレーだった。
世界王者のタイトルを持つリカルドが驚くのも当然だ。