座間健司ブログ

海外フットサル情報ブログ

スペイン

ルイス・アマド引退、世界最高の選手は神話となった

2016/08/27

  • スペインリーグ優勝9回。
  • スペインカップ優勝9回。
  • スペイン国王杯優勝1回。
  • スペイン・スーパーカップ優勝11回。
  • UEFAフットサルカップ優勝4回。
  • インターコンチネンタル優勝5回。
  • イベリアカップ優勝2回。
  • スペイン代表歴179試合。
  • ワールドカップ優勝2回。
  • 欧州選手権優勝5回。

キャリアを通して、これほどタイトルを勝ち取った選手は今後も現れないだろう。獲得可能なタイトルを全て手にした。この選手を語る上で、棚に並んだトロフィーを見るだけでも十分にその偉大さが理解できるが、タイトルの数だけでは計れないものを、彼はこのスポーツに与えてきた。1996年から始まり、2016年に終わった実に20年の選手生活において、いつの時代も「世界最高の選手」と評された。スペイン代表、インテルのピンチを幾度となく救ったセーブは観衆を感嘆させ、毎日のトレーニングに挑む姿勢、一貫したプロフェッショナルな振る舞いは、フットサルをプレーする全カテゴリーの全世界の選手の規範だった。

2016年7月4日、ルイス・アマドが、現役を引退した。

ルイス・アマドは世界最高の"ゴレイロ"ではない。世界最高の"選手"だ。レニージオ、ハビ・ロドリゲス、ファルカン、リカルジーニョのように決定的なプレーでスコアボードを動かす。偉大なアタッカーたちとは違い、ルイス・アマドは1と掲示されてもおかしくないシュートを、セーブで幾度となく0に変えていた。

2006年、ファルカン擁するブラジルのマウウィーとインテルのインターコンチネンタルカップ決勝を当時ブラジル代表監督だったペセは、こう展望した。

「両チームには世界最高の選手がいる。ファルカンとルイス・アマド、どちらが勝つか見てみようではないか」

マウウィーのサポーターしかいないブラジルのアウェーの地で、インテルは0-1で完封勝利。ルイス・アマドがスコアボードを動かし、ファルカンは動かせなかった。

ルイス・アマドがゴールマウスに立つだけで、相手は畏怖する。

2007年、スペインとの欧州選手権決勝を前日に控えたイタリア代表キャプテン、ナンド・グラナは「ルイス・アマドがゴールにいると、完璧なシュートでないと決まらないと思い、力んだり、萎縮するんだ」と語っていた。きっとイタリアだけでなく、ブラジル、ロシア、もしくはエルポソ、バルセロナといったルイス・アマドと対峙するチームの誰もがそう思っていただろう。

一方、同僚は絶対的な信頼を寄せていた。2007年ポルトガルで開催された欧州選手権準決勝、ホストカントリーとの決闘はPK戦に突入。スペインはPK戦を制し、決勝に進んだが、PK戦に入った時にダニエルは勝利を確信していた。「だって僕らにはルイスがいるから」

トレーニングで数多くの負けず嫌いを見てきた。世界の名手はどんなゲームにも真剣だ。ルイス・アマドも例に溺れず、その1人だ。得点が入って当たり前のメニューでも失点する度にコースを切る角度が悪かったマルキーニョら同僚に容赦なく罵声を飛ばした。どのトレーニングでも毎日100パーセントのコンディションで、全力で取り組む。

後半開始前、代表でもインテルでも、毎試合コートに必ず1番早く戻って来るのが、ルイス・アマドだ。走ってコートに入り、ウォームアップを始める。準備に余念がない。2010年、ハンガリーでの欧州選手権準々決勝ロシア戦はPK戦にもつれ込んだ。スペインは明らかなハビ・ロドリゲスのゴールが失敗とされ、その後、世紀の誤審として各メディアで報道された。ルイス・アマドは多くの選手が抗議する中、1人気持ちを切り替え、ロシアのシュートを余計に1本多くセーブして試合に勝利すると、試合後の喧騒が続く中、身体が冷えないようにシャツを着替え、ストレッチを黙々とこなしていた。

驚異的なセーブ、絶対的な存在感にそれを形成する日常のプロフェッショナルな姿勢。「世界最高の選手」ルイス・アマドを、フットサルを愛する人々は今夏から神話として語り継いでいく。

-スペイン
-, ,