早過ぎる敗退、ポルトガルがイタリアに敗れる
2016/08/28
リカルジーニョという稀代のタレントを擁しながらも、またもポルトガルは欧州への頂を登ることができなかった。準々決勝、老獪で競争力があるイタリアに3−1と敗れた。
前半は恐怖がピッチを支配していた。
相手の出方をずっと両者が伺っていた。睨み合いがずっと続き、具体的なアクションは相手がミスをした時にしか行わなかった。
いつゴールを奪いにいくのか。
いつ攻撃に出るのか。
パス回し、そしてディフェンスはゴールを奪うためではなく、スコアボードを動かされないために行っていた。
前半のファウル数はイタリアが2、ポルトガルが1。審判が寛容で笛を吹かなかったこともあるが、あまりにも積極性に欠ける試合だ。1点を失うという「恐怖」が彼らの足を止めていたのだろう。
しかし、そんな展開でも質の高いプレーをする選手たちはチャンスをつくる。イタリアはシンプルにロングパスで相手ディフェンスの裏をとり、そして中合わせをしようとしていた。いかにもイタリア国籍を持つブラジル人が多いチームがするようなフットサルだ。
一方のポルトガルはパスの出し手であるリカルジーニョ、ピヴォのカルディナルのコンビから何度かチャンスをつくろうとしたがなかなかチャンスをつくれない。カルディナルは1度ヘディングシュートが枠を捉えたが、ネットを揺らすことはできなかった。
エースのリカルジーニョも個人技で突破をはかったが、イタリア人は彼を徹底的に警戒しているようで、ファウルも辞さないプレーで、決して自由にはさせなかった。
恐怖がピッチを支配した前半は得点が生まれないまま、0−0と静かに幕を閉じた。
スコアに直結できなかったポルトガルの攻撃
後半は前半とは対照的にスコアボードがすぐに動く。イタリアがポルトガル陣内へ侵攻。最後はファー詰めへのクロスをクリアしようとしたポルトガル代表のキャプテンのアルナルドのオウンゴールでイタリアが先制する。
スコアボードが思わぬ形で動く。これでもうポルトガルは攻撃に出なければならなかった。
ポルトガルは後半のスタートからキャプテンのアルナルドがピッチに立った。アルナルドの体調は万全ではなく今大会はポイント、ポイントで使われることが多い。
オウンゴールを生み出してしまったが、スピードある小柄なアタッカーは前半最後の1分、そして後半の頭に起用されるとポルトガルのパス回しは円滑になる。運動量と瞬発力がある彼が動き回り、ポルトガルに多くのスペースをもたらす。相手ディフェンスにとってはマークを拡散させる嫌な動きだ。
そんなアルナルドの動きにより、リカルジーニョとカルディナルのラインを基本としていた攻撃が多彩になり、幅ができた。
また今大会初めてピッチに立った左利きのリカルドもポルトガルに好影響を及ぼしていた。アラの彼は線が強く、イタリアの激しいディフェンスに対してもしっかりボールをプロテクトできて、時間をつくることができる。
カルディナルが中央突破をはかり、イタリアはその攻撃をファウルで止めるしかなかった。右サイドで細かくパスをつなぎ、大きく左サイドに振って、フリーのアイカルドがシュートを放つ。目に見せて、ポルトガルの攻撃がチャンスをつくれるようになってきた。
そして24分、ポルトガルに待望の同点ゴールが生まれる。発端はイタリアのミスだった。最後尾でのパスミスからボールを奪われると、リカルジーニョはゴレイロとの1対1の状況を迷うことなく振り抜き、同点ゴールを奪う。
完全にポルトガルに追い風は吹いていた。ただその風力を肝心のスコアへと転換させることができなかった。
お手本のようなサージのゴール
イタリアは単発ではあるが、決定機の数はポルトガルと同じだった。ただ攻撃の手数が少ないがゆえに、劣勢のように映るが、彼らは素早い攻撃から効率よく決定機をつくっていた。
そんな効率のよさを象徴したのが、29分に生まれたサージのゴールだ。すごくシンプルな形でイタリアが勝ち越しゴールを奪った。
スペインリーグのバルセロナに所属するイタリア国籍を持つブラジル人のサージ。小柄なアラ−フィクソの持ち味はなんといってもその左足だ。質の高いパス、そして強烈なシュート。特にそのシュートは同じ所属チームでスペイン代表のトーラスと比べても遜色がない。
そんな彼の左足が噴いた。
右サイド後方からピヴォへくさびを打つサージ。1度、右サイドを駆け上がってディフェンスの裏でパスを受けようというステップ。そのフェイクに騙されたディフェンスは後ずさり、1歩後退した。ランニングの方向を転換したサージは足元でボールを持つピヴォへ走り込む。そしてピヴォが落としたボールをダイレクトで蹴り込むとすごい勢いでゴール左上隅へ突き刺さった。
わかっていても止められない。ポルトガルもサージの左足は十分に研究しているはずだが、やられてしまった。
1点のリードを許したポルトガル。
リカルジーニョ、カルディナル、そしてアルナルドを中心に攻め立てるが、なかなかイタリアの堅いディフェンスを崩すことができない。フリーで打てたとしても、枠からそれる。
残り時間4分弱。ポルトガルはタイムアウト後にリカルジーニョをゴレイロにパワープレーを始めた。しかし、このパワープレーが全く機能しなかった。逆に37分にイタリアにパワープレーを返されてしまい、ポルトガルは2点のリードを奪われてしまう。
その後、互いにゴールは生まれず。
イタリアが3−1でポルトガルを下し、準決勝進出を決めた。
ポルトガルのシュート数は35本、そのうち枠内は15本だった。一方のイタリアは25本で枠内は16本だった。
攻撃はしていた。しかし、彼らは後半の立ち上がりに失点を許し、1−1という流れが傾いていた大事な時間帯でゴールを奪うことができなかった。一方のイタリアはその時間帯を凌ぐとサージの一撃で1点を奪った。
イタリアがこの試合、無理に攻めなければいけない時間帯はなかった。リードされなかったからだ。彼らは終始自分たちのやり方を変えず、常にバランスを考え、慎重に攻めた。一方のポルトガルはポイントとなる時間帯でゴールを決められなかった。
優勝候補ポルトガルが準々決勝で早くも敗退した。
スコアシート
UEFA欧州選手権クロアチア2012 準々決勝(2012/2/7)
Italy 3-1 Portugal
- 1-0アルナルド(ポルトガル)20分 ※オウンゴール
- 1-1リカルジーニョ(ポルトガル)24分
- 2-1サージ(イタリア)29分
- 3-1パティアス(イタリア)37分
準決勝組み合わせ
同日、ロシアはセルビアを2−1で下し、準決勝進出。よって準決勝のカードは以下のとおり。
- クロアチア×ロシア
- スペイン×イタリア