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UEFAフットサルカップ

ウグラが戦略で手繰り寄せた欧州王者、リカルジーニョの負傷(UEFAフットサルカップ・グアダラハラ2016 決勝)

2016/08/27

UEFAフットサルカップ2016優勝カップを掲げるウグラの選手たち

決勝戦でインテルを破り、優勝したロシアのウグラ。

ピッチ上の選手に指示を出すウグラ監督カカ

ウグラを指揮するブラジル人監督カカ。ロシア人、ブラジル人と"トラバハドール(熱心なハードワーカー)"のキャラクターを持つ選手たちを集め、そのゲームプランを遂行させた。

UEFAフットサルカップ2016優勝カップを見つめるリカルジーニョ

リカルジーニョがトロフィーの横を通り過ぎる。インテルは今シーズン最大の目標であったタイトルの獲得チャンスを目の前で逃してしまった。

筋書きがない、とはこういうことか。まだ壮大なドラマは終わっていなかった。

残り54秒、スペイン王者は2-4となる失点を許した。インテルの応援が8割を占める会場はさすがにこの失点に打ちのめされ、黙っていた。それまで「そうだ、(逆転優勝は)できる!」とスペインで定番のチームを励ますコールをしていたが、土壇場での追加点を目の当たりにし、沈んだ。

スタンドが熱を取り戻したのは、残り32秒だった。パワープレーでゴレイロのユニフォームを着たダニエルが強烈なシュートを突き刺し、1点差に迫っていたインテルにさらにチャンスが訪れる。ウグラの21歳のチスカラが必要のないところで削り、2枚目の警告で退場した。若気の至りだ。こういう失敗が青年を大人の選手に成長させるのは確かだが、欧州のタイトルを目の前にしたウグラに同僚の退場を前向きに捉える余裕はない。ブラジル人フィクソ、マルセーニョは天井を見上げ、罵詈雑言を繰り返し、その後にベンチの同胞に向かって、不満を訴えていた。ブラジル人監督のカカは両手を上げて、コートの3人に冷静になるように言葉とジェスチャーで伝え、数的不利な残り30秒を乗り切るためにコートに誰を投入するのか、指示した。もう一方のベンチにいる指揮官も頭を切り替えていた。審判に21歳の若者が猛抗議する間にヘスス・ベラスコは選手を集め、5対3のレクチャーをしていた。

インテルの土壇場での同点劇の舞台は整った。世界選抜と言える陣容を誇る選手たちは、30秒あれば必ず決定機をつくる。スタンドもベンチ同様にそのことを確信していた。

ゲームが再開すると数的優位を活かし、インテルは案の定、決定機を手にした。しかし、結末は残酷だった。ウンベルトが放ったシュートはバーを直撃し、スタンドに浮かんだ希望は、ため息と共に霧散した。

ウグラの勝因

勝因はチーム作りとゲームプランだ。ウグラには小柄なロシア国籍を持つブラジル人アタッカー、ロビーニョが所属する。2012年ワールドカップ得点王になったエデル・リマもいる。突出した個を持つ2人だが、あくまでもこのチームではアクセントに過ぎない。オプションではあるが、メインキャストではない。ウグラの軸をなすのは、トラバハドール(労働者)だ。ロビーニョ、エデル・リマ以外に3人のブラジル人がプレーしたが、彼らはみんなが真っ先に頭に思い描くようなブラジルプレーヤーではない。チームの規律、監督のオーダーを忠実に守り、勝利のためならば、汚れ仕事もいとわない。犠牲心があるプロフェッショナルだ。ロシア人もそうだ。ロシア代表のピヴォ、リコフはテクニックも高く前線で起点となるが、ディフェンスになると他の選手同様に全速で戻る。ウグラの真髄は規律と犠牲心だった。

インテル相手に主導権を握って、ゲームを進めることができるチームは今、世界どこを探してもいない。ポルトガル代表リカルジーニョ、スペイン代表オルティス、ポラ、ヘスス、ブラジル代表ラファエル、ダニエル。タレント集団はどのゲームも自分たちがイニシアチブをとって、試合を進める。インテルが48本、ウグラが25本。シュート数からも分かるようにウグラもインテルに主導権を奪われた。劣勢となると分かっていたゲームで、ウグラがとった戦略は、カウンターで決定機を見出すことだった。

たとえばウグラの2点目だ。ボールを奪われたボルハが床に転倒する。するとウグラは4対3という数的優位を活かし、一気にボールを前に進め、最後はマルセーニョが決めた。数的優位になった時、ウグラの4人の選手は判を押したかのように揃って急に縦へ走り出した。攻撃の共通のイメージ図に沿ったそのカウンターに機能美を感じた。前半終了間際の1点は、劣勢のウグラに後半への活力を与えた勝負の命運を分けるゴールだった。

ウグラはカウンターから2点、そして後半に決めた3点目はタイムアウト後のセットプレーだった。カカ監督の采配は恐ろしいほど的中した。

不運だったインテル

ヘスス・ベラスコ監督が指揮するインテルは、観衆にとって魅力的なチームだ。試合の主導権を握り、ボールを大事に回し、ハイプレスで相手を押し込む。攻撃的なフットサルでスペインを制したチームは、欧州王者まであと1歩と迫った。

彼らにとって不運だったのは、2人の主軸の負傷だ。

攻撃のキーマンであるリカルジーニョは準決勝でかかとを痛め、シュートを打てなかった。パワープレーを仕掛けたが、リカルジーニョはシュートが打てないので、指揮官に自分をコートに送り込まないように進言していた。リカルジーニョはこの日シュートゼロ。ドリブル突破も試みなかった。すれば足が壊れることは分かっていたからだ。

リカルジーニョ同様にブラジル代表ラファエルも負傷した。前半に太ももの裏の筋肉を痛め、後半は1度もコートに立っていない。攻守の軸であり、世界随一の"トラバハドール"の不在は、攻撃、そしてハイプレスのクオリティを低下させた。

奇しくも2人は昨シーズンのUEFAフットサルカップでインテルが敗退したスポルティング・リスボン戦でも負傷のため、コートに立っていない。インテルにとって2人がいかに重要か。シーズンで最も重要な試合をまたしても不運な負傷で落とした。

スコアシート

UEFAフットサルカップ決勝
ウグラ(ロシア)4
インテル(スペイン)3

  • 日時:2016年4月24日20時30分キックオフ
  • 会場:ムルティウソス(グアダラハラ・スペイン)
  • 観衆:5,000人

[得点経過]

  1. 1-0 アファナシエフ(ウグラ)5分16秒
  2. 1-1 カルディナル(インテル)5分44秒
  3. 1-2 ポラ(インテル)13分07秒
  4. 2-2 マルセーニョ(ウグラ)17分15秒
  5. 3-2 アファナシエフ(ウグラ)37分58秒
  6. 4-2 カタタ(ウグラ)39分05秒
  7. 4-3 ダニエル(インテル)39分16秒

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