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アジア選手権

タイがイランに偉大な試合で勝利、日本も決勝進出(アジア選手権2012準決勝)

2016/08/28

タイ代表の決勝ゴール

延長戦後半、タイは第2PKを失敗した直後、そのコーナーから決勝点を決めて、イランを準決勝敗退に追い込んだ。

5月30日にアジア選手権準決勝2試合が行われ、タイと日本が決勝進出を決めた。この日に行われた準決勝の結果は以下のとおり。

  • タイ 5-4 イラン
  • 日本 3-0 オーストラリア

今大会最高のスペクタクル(タイ×イラン)

「フットサルはこんなにも魅力の詰まったスポーツなんだ!」

タイ代表対イラン代表のゲームを観戦した人間、たとえば予備知識がなくても、初めて見た人でもきっとそう思ったはずだ。そしてフットサルを日常的に観戦する人間はこう思ったはずだ。

「これこそフットサルだ」

最高のスペクタクルは国籍、国境に関係なく、人の心を揺さぶる。ミゲル・ロドリゴ監督は日本を決勝に導いた直後の会見で準決勝第1試合をこう評している。

アジアで正真正銘のフットサルが行われました。プレス、カウンター、ポゼッション、1対1、得点、そして感動。これがフットサルです

決勝進出の2チームの違い

ゲームを面白くしたのはタイだ。イランは相変わらず強かった。先制点はボールをキープし、フィクソのケシャバルスのスルーパスをシャムサイーが流し込んだものだった。2点目はアタッカーのタイエビが個人技でコースのないところにきれいに流し込んだものだ。

決定力、個人能力はイランに分があった。

ではタイはなぜ勝ったのか?

タイは日本のフットサルと共通項が多い。ディフェンスはアグレッシブで、そしてセットプレーを大きな武器としている。そして、攻守の切り替えが速い。日本とタイの間でこの3項目には大きな違いはない。

ただ、今大会の日本になくて、タイにあるものがある。

それはタイがボールを持ち、パスを回し始めた時にわかる。個人能力でイランに劣る彼らだったが、フットサルは個人能力だけで勝てる競技ではない。個人能力だけならば、ブラジルが未来永劫、世界チャンピオンだ。しかし実際にはスペイン代表のユニフォームの胸には世界王者の称号である星がふたつ付けられている。スペインがブラジル相手に1対1を仕掛けるとき、ブロックなどを用いて、もしくはアタッカーがディフェンスに比べて優位となる状況でパスを受けられるように工夫している。そして彼らは隙さえあればシュートを打とうとする。タイはそれを行なっていた。ポゼッションをした時もサイドで仕掛けが得意な選手にパスを回し、仕掛けさせていた。それは身体的に恵まれた選手を最前線に置いた時も変わらない。

タイの攻撃にはシュートへの意欲がある。シュートで終わろうとする。パス回しというものをゴールを奪うために行なっている。

日本との大きな違いはそこだ。幸い日本のディフェンスは堅く、フィニッシュにいく意欲の欠如は致命傷となっていないが決勝でタイを上回るにはもっと仕掛ける必要がある。仕掛けられる状況ならば、チャレンジしないとゴールは生まれない。日本には仁部屋和弘、小曽戸允哉、稲葉洸太郎ら1対1を得意とする選手たちがゴールへの突破口を開いてくれることを期待したい。

タイはキャプテンでゴレイロのトンパの好セーブもあり、延長線の末、イランに勝利した。

ビッグマッチには大きなドラマがある。

延長後半、イランはシャムサイーが土壇場で4-4となる同点ゴールをヒールで決める。イランの顔であるピヴォの執念が宿ったゴールだった。こういう場面で千両役者はやはり仕事をすると思っていたが、その直後シャムサイーは軽率なタックルで相手を倒し、タイに第2PKを与えてしまう。がっくりとうなだれるシャムサイー。ただこのタイのチャンスを2008年ワールドカップで活躍したゴレイロのナザリがセーブ。イランの選手がみんな絶叫するナザリに抱きつく。

だがイランのピンチは終わっていなかった。その直後のコーナーだ。第2PKを逃れたという安堵感からか、完全にイランの足は止まっていた。タイがこの場面でコーナーからしっかり枠にシュートを飛ばし、決勝点を奪う。

決勝点を奪われたイランに反撃する力も時間も残っていなかった。

終了のブザーと共にタイの選手とオランダ人指揮官が喜びのガッツポーズ。ついには胴上げまで始まった。確かにそれほど感情が爆発するくらい偉大なゲームを彼らは制した。

アジアでは敵なし、優勝候補の本命だったイランが準決勝で姿を消した。

タイは準決勝でオーストラリアに勝利した日本と対戦する。決勝は6月1日19時30分(日本時間24時30分)にキックオフされる。

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